乗換案内を提供するジョルダン株式会社にメディアマネタイズについて聞いてきました

top

アドテクという言葉が流行りはじめて数年。実際にメディアを運営している媒体社はどのようなことを考えているのか?今回は「乗換案内」を提供しているジョルダン株式会社に、メディアマネタイズの実情と昨今のアドテクブームについて、詳しく聞いてきました。

まず、ジョルダンさんが提供されているサービスについて教えてください

弊社でもっとも大きな媒体が「乗換案内」というサービスで、PCとスマートフォンでサービスを提供しています。現在月平均1,200万人のユーザー様にご利用いただいており、今年の4月には過去最高の実績となりました。その他にもジョルダンニュース!雑誌ネット映画の時間などの媒体を運営しています。

激動の時代を切り抜けた秘密は「腹をくくったこと」

メディア企業として歴史があるジョルダンさんからみて、この数年メディアのマネタイズは大きく変わってきましたか?

そうですね、この数年でメディアのマネタイズを取り巻く環境は劇的に変わったと思っています。その中でもこの2つの変化は大きなものでした。

1つ目はいわゆるガラケーからスマートフォンへの転換です。何から何まですべてを変えなければならないような大変革でした。特に弊社のようにモバイルデバイスを主戦場に戦ってきたメディアの方々にとって、この数年は激動だったと思います。

2つ目はアドネットワークやDSP、SSPと呼ばれるネットワーク型の広告商材の登場です。単一媒体を買うという概念がどんどんなくなってきて、いわゆる従来の純広が売れなくなりました。この2つの変化は非常に大きかったと思います。

このようなマーケットの変化の中、弊社でもその煽りをうけて、モバイルの純広告がどんどん売れなくなっていきました。がんばってアドネットワークでリカバリーしようとしても収益性が違うのでまったく歯が立たないんですね。2、3年前の移行期は本当に大変でした。

V字回復の決めては何だったのですか?

SONY DSC

腹をくくってすべてをゼロから見直したことです。純広の商品設計から、自分たちのメディアが戦う領域、戦う土俵、どのようなクライアントさんにどのような価値を提供するのか、何から何まですべてを改めてゼロから考え直しました。そして「よし!これを売り物にしよう」と決めたんです。極論それ以外はどうでもいい!というくらいの割り切りですよね。これが1年くらい前です。そしてそれが花開きはじめたのが、やっとここ最近です。

もう1つ同時期に行ったのが「アドテク」分野のテコ入れです。特にこれまでPCは本当に何もやってなかったものですから、どのようなプレイヤーがいるのか知るところからはじめ、枠の構成から使うテクノロジー、あとは自社で広告配信システムも持っているので、どのように連携を取るのかなど、すべてを勉強し直しました。同時にPCで培ったこのようなノウハウをスマートフォンのウェブ面にも応用することになるのですが、結果スマートフォンウェブの収益性は3倍-5倍ほど伸びたと思います。

純広告とネットワーク広告を戦わせず、共に生きる道を探す

メディアさんは純広告とネットワーク広告をミックスしてサイト全体の収益最大化を目指していると思うのですが、それぞれの使い方のコツみたいなものはあるのでしょうか?

ほんの1年ほど前までは「まずは純広告を売りましょう、そして余った枠はアドネットワーク、SSPに回しましょう」と考えていたんです。これはおそらくどのメディアさんも同じだと思います。これはこれで間違っていないと思います。

しかし弊社では「まずはアドネットワークやSSPで収益の柱を作りましょう。純広告で可能な限り収益をブーストさせましょう」という考えに変えました。アドテクの台頭や市場環境の変化を考えるとそれが一番だと思ったからです。

これを説明すると、「いやいや、同じ面で純広告とネットワーク広告を配信するとカニばるじゃん」という声が出ますよね。

たしかに通常はそうなります。だから純広告とネットワーク広告がカニばらないように商品そのものを作りなおしたわけです。先ほど申し上げた「割り切り」というやつです。一般的な枠売りの広告商品は割り切って全部ネットワーク広告にして、純広告はアドネットワークでは実現できないような商品にする。自分たちの資産を最大限に活かして、自分たちのデータを使わなければ実現できない商品を純広告にする。そうすることでカニばらない環境を作ることができます。

クライアントさんも、純広告は店舗さんや流通さんに特化しました。つまり戦う土俵を明確に切り分けたんです。店舗さんや流通さんのための純広告、そしてたくさんの広告インプレッションを求められているナショナルクライアントさん含めたその他のお客さまのためのネットワーク広告と、明確に土俵を変えて勝負をしています。

割り切ることで広告商品もお客さんのニーズも明確になる

新しい純広告とは具体的にどのような商品なのでしょうか?

SONY DSC

具体的には目的駅指定や路線指定といった商品です。ユーザーさんの目的地に対してクライアントさんが期間で購入でき、ユーザーさんが検索して目的地がそこだった場合、検索結果ページの上部にそのお客さまの広告が配信されます。たとえば「成田空港」という駅は、成田空港に乗り入れをしている鉄道会社さんや、海外旅行保険の会社さんなどにご購入いただいたりしています。仕組み自体は非常にシンプルです。弊社には現在約9,000駅のデータがあり、すべて指定することが可能です。枠のサイズなどは何もかわらないので、見た目では純広告なのか、ネットワーク広告なのかわからないと思います。

実はこの商品の肝は、その期間その駅を調べると100%配信されるということなんです。インターネット広告は、大抵10回に1回とか、5回に1回とか、cookie持ってないと出ないとか、複雑なんですね。皆さん驚かれますが「どうしたら出るの?」という質問が実はけっこう多いんです。弊社の商品は簡単で駅指定すればその期間100%出ます。実はこのシンプルさというのはバカにできなくて、広告主さんにとっても、代理店さんにとっても、わかりやすい。

弊社は先ほど申し上げた通り、純広告は店舗さんや流通さんをターゲットにしていますから、これらの広告主さまにとって、わかりやすく広告出稿できて必ず掲載されるということは非常に重要なんです。

これまで過去には、銀座に店舗をお持ちの大手百貨店さんがバレンタインの時期に「銀座駅」を購入されたということがありました。横浜中華街の老舗中華料理屋さんが中華街最寄駅の「石川町」という駅を購入されたこともありました。このような広告主さんは、アドネットワークやDSPには、あまりないクライアントソースだと思うんです。横浜の中華料理屋さんがスマホアプリのアドネットワークには出さないでしょ?ただし乗換案内で横浜中華街の最寄駅を調べたユーザーさんに必ずその期間出るなら出稿いただけるんですね。だからクライアントさんもネットワーク広告とはバッティングしない。土俵を変えて純広告を売ることで、食い合うのではなく、共に商品として共存できる環境を作れたわけです。

しかしもちろん約9,000駅すべてを売り切れるはずがありませんから、純広告が入っていないときにはネットワーク広告を使って収益化をしています。

一方でベースを作っているネットワーク広告はどのように使っているのでしょうか?

PC、スマホとも、はじめた当時はやってみないとわからないので、いろいろなSSP、アドネットワークを使ってみました。おそらく累計でPCだけでも15社くらいは使ったと思います。その中でいいものは残し、悪いものは外してという作業を繰り返して、現在の自分たちの勝ちパターンを見つけたということです。

PCだと現在はGoogle AdSenseをDFPのDynamic Allocationという機能を利用してメインに使っていますが、実はそれ以外の会社さんも10社くらいは使っていて、それをうまく組み合わせることで収益の最大化を行っています。ただこれは弊社のパターンであって、各社さんそれぞれ勝ちパターンというものがあるのでそこはいろいろ試された方がいいと思います。

スマートフォンの場合は、早い段階からmediation機能を持ったアドサーバーを自社開発して、複数のアドネットワークの配信切り分けをすることでもっとも収益性が高いパターンで配信を行っています。

PCもスマートフォンも、まずはやってみて、いいものを残していくということですよね。

少し細かい話ですが、PCの場合たくさんのSSPやアドネットワークを利用すると、CPM最適化問題配信速度の問題が発生すると思うのですが、そこはどのように解決したのでしょうか?

1つ目の問題については、実際にテストをやってみたんですね。その結果、弊社の場合はいくつかのSSPやアドネットワークを利用した方がいいという結論になりました。ただしこれが本当にメディアの勝ちパターンなのかはもちろんわからないです。どのようなユーザーが訪れているのかにも依存すると思いますから。ただ少なくとも弊社ではいくつか試してみて、今の配信方法が一番よかったということです。正直にお話するとGoogle AdSenseで約半分くらいのインプレッションを配信しています。その他が残りといった形です。一見全部Google AdSenseを配信したほうがいいような気もしますが、実際は複数の広告事業者を使ったほうが収益性はよかったです。これもテストをしたからわかったことですね。

2つ目の速度の問題は、たしかに気にはしました。この面だとまずいなとか、ここは問題ないかななどということを気にしながら運用はしています。ただし、まずやってみないと、どの程度この速度の問題が発生するかわからないので、まずはトライしてみて、そして外してということを繰り返していまの形になりました。

インターネット広告の真ん中にいる方はすべてを知っていてほしい

様々なサービスが日々発表されている「アドテク」の領域ですが、メディアさんから見てこの「アドテク」というのはどのように見られているのでしょうか?

私は広告オタクだという前提ですが(笑)、一言で言うと「すごい可能性あるんじゃない!?」と思っています。インターネット広告の市場が始まって十数年経ち、これまで私たちがいた広告の世界が大きく変わろうとしていますよね。手売り純広告の時代から、様々なテクノロジーが生まれて、これまでできなかったことがどんどんできるようになっています。メディアは、これまで広告商品を作っても代理店さんにお願いしないと売ってもらえなかった時代から、広告主は無数にいて、自分たちの努力次第で広告収益が何倍にもできる環境が出来上がりつつあります。こんなこと今までのインターネット広告の世界にはなかったことです。だからこそ可能性があると思っているし、もっともっと市場が成長すればいいと思っています。

一方でメディアさんから見ていまの「アドテク」に課題やギャップ、ズレなどはありますか?

SONY DSC

課題というか、お願いですが、広告マーケットの真ん中にいるSSPやDSPなどのアドテク会社、広告主さんに提案をされる代理店さんなどは是非もっともっと勉強して、その情報をメディアにも教えてほしいと思います。正直に言えば、真ん中にいる人たちは広告の商流の上流から下流まで全部知っていてほしいんですよ。いまの広告の世界はどんなプログラムで、どんなロジックで動いているのか?何が課題で何がチャンスなのか?単純にCPMが上がりますよ、CPAをあわせますよだけではなく、いま広告マーケットで何が起きているのか?一緒にデータを見ながら考えていけるパートナーのような存在になってほしいなと思います。弊社にもたくさんの会社の営業の方が来ますが、今後は「営業(セールス)」ではなくて「コンサルティング」に近いようなところが残っていくのではないかと思います。

メディアの収益最大化をお手伝いするのがSSPだとすると、SSPに対して何か要望や課題などはありますか?

正直に申し上げると、日本国内のSSPは変わらざるを得ないと思っています。今のままだと、おそらく市場が広がらないと思うからです。今はどのSSPもCPMがいくらですという勝負ですよね。もちろんCPMは大切です。最終的に収益あげないといけませんから。

ただ、本当にやってほしいことは、「CPMいくらです。いれてください」という営業ではなく、「私たちのSSPを入れると、こういう運用をして、こういうデータを使って、こういうことをするので、もしくはこういうことができるので、いまの収益が120%になる可能性があります」みたいなことなんですよ。結果それがうまくいってもいかなくても、定例会では一緒にレポートを見ながら、たとえば枠1つ1つに対して、各DSPの入札金額の分布や、フロアプライスをABテストした場合の違いについて議論したいですし、「今のフロアプライスの引き方とDSPからの入札分布を見るとこの部分は収益をロスしているので、次はこういうプランで行きましょう!」といった具合に、次はどうしたらいいのか?現在のトレンドや新しく出てきた技術や商品も加味しながらこういうことをやるとまだまだ可能性があるということを継続的に一緒に考えていきたいんです。

一般的なRTBの仕組みについて詳しくお知りになりたい方は「注目のRTB(Real Time Bidding)、取引の流れってどうなってるの?」をご覧ください

一方で、私たちも含めてですが、メディアにももちろん課題はあると思います。一言で言うと今は任せっきりですよね。任せっきりだといつまでたっても自社にノウハウが溜まらないじゃないですか。メディアが本当は一番広告主を向いてないとダメだと思うんです。商品を売っているのはメディアなんですから。

次はプライベートエクスチェンジ、そして動画リッチ広告へ

ジョルダンさんが次にトライしたい領域はありますか?

プライベートエクスチェンジと動画・リッチ広告の2つです。この分野はおそらくあと半年から2年くらいはかかると思っていますが、今から仕込んでおかないと遅れてしまうと思うので今年トライしたいと思っています。現在IABが定義しているProgrammatic領域には4つの取引レイヤーがありますよね。弊社では下の2つは対応できたので、次のチャレンジは上の2つだと思っています。

IABが、RTBに代表されるProgrammaticやautomationの取引について、パブリッシャ視点から4つの取引方法が存在するというレポートを発表しています。PROGRAMMATIC AND AUTOMATION – THE PUBLISHERS’ PERSPECTIVE

スクリーンショット 2014-06-03 19.11.59

動画広告については、Tubemogulなどがいま急速に成長をしている中で、プライベートエクスチェンジが一般的になれば、そこに動画広告やリッチ広告の領域がついてくると思っています。逆にいうとプライベートエクスチェンジとそこは必ずワンセットになるであろう思っています。近年のアドテクの動きをみてもここの領域は仕込んでおくべきところだと思っています。

今回インタビューを受けてくださったのは・・・

ジョルダン株式会社

メディア事業部 マネージャ 赤津 安昭 さんです。

貴重なお話を頂き、ありがとうございました。

VOYAGE ADTECH UNIT |株式会社ボヤージュグループ アドテクユニット キャリア採用サイト VOYAGE ADTECH UNIT |株式会社ボヤージュグループ アドテクユニット キャリア採用サイト