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理解が進む!パブリッシャー向け最新のビューアビリティ定義と改善施策

2016.12.09 761view
Photo by flickr.comEsther Vargas

今回のテーマは「ビューアビリティ」です。このビューアビリティを計るためのビューアブルインプレッションがインプレッションに代わる新しい広告指標として、ディスプレイ広告業界全体から注目を集めています。どんな経緯で注目されはじめ、各プレイヤーがどういった対応を取っているのか、パブリッシャーはどう対応していくべきなのか、詳しく解説して行きたいと思います。

1.ビューアビリティとは

ビューアビリティを直訳すると「視認性」や「可視性」となり、広告業界で語られる場合、実際に広告が閲覧できる状態にあるかを測る指標として使われます。「広告が閲覧できる」とは、デスクトップやスマートフォンのディスプレイ上に広告が一定の時間表示されている状態を指します。広告が表示されてもすぐにスクロールされ画面から外れてしまった場合や、読み込みが完了していてもユーザーが広告位置までスクロールせずに離脱してしまった場合、その広告はビューアブルとは認められません

この「ビューアビリティ」という指標が注目され、実際に広告の効果測定指標として利用され始めた背景には、スマートフォンの普及があります。PCに比べ画面サイズの小さいスマートフォンは、サイト自体を縦長にせざるを得ず、掲載位置がサイトの下部になればなるほど、広告に到達する前にユーザーが離脱してしまう可能性が高くなります。広告主は「広告がきちんとユーザーに見られているか(いや、見られていないのではないか)」という疑念を抱きはじめました。そんな疑念が高まりつつあった2014年12月、Googleはインプレッションのうち56.1%の広告がビューアブルとは認められないという調査結果を発表しました。ビューアブルでない、つまり見える状態ではない広告が市場の半分以上を占めているという結果は、ディスプレイ広告業界関係者に少なからず衝撃を与えたのではないでしょうか。

google_viewability_report

think with Googleより

さらに、GoogleはAdWordsのディスプレイ広告入札にvCPM(viewable Cost Per Mille、ビューアブルインプレッション1000回あたりの広告単価)を採用すると発表しました。各DSPやネットワーク、パブリッシャーも課金方式をeCPMからvCPMに切り替え始めています。現在、ビューアビリティはディスプレイ広告に携わるすべてのプレイヤーが取り組む業界全体の課題となりました。

2.ビューアビリティの定義

ビューアブルインプレッションの計測にあたり、どういった状態がビューアブルであるかという業界共通の定義はまだ定まっていません。米メディア指標協議会 Media Rating Council(以下MRC)と米ネット広告団体 Interactive Advertising Bureau (以下IAB)が発表したガイドラインでは「広告のピクセルの50%以上がスクリーンに1秒間以上表示されている状態」と定義されており、この基準に準拠したビューアブルインプレッション計測が主流になってきています。しかし、これが広告の効果を計る新しい指標として相応しいのかという議論が現在も続いています。一部の広告主はこの定義を受け入れられないと主張しており、業界標準が定まるにはまだ時間がかかりそうです。

各団体によるビューアビリティについての発表

■2012年3月
comScore Releases Full Results of vCE™ Charter Study Involving 12 Leading U.S. Advertisers
comScoreがレポート内で31%の広告はインビューではなかった、見られる機会が与えられなかったと発表
■2014年6月30日
MRC Viewable Ad Impression Measurement Guidelines
MRCとIABがビューアブルインプレッションについてのガイドラインを発表
主にデスクトップのブラウザベースでのインプレッションについて以下の通り定義

  • ディスプレイ広告(インバナー広告)の場合広告のピクセルの50%が描画されてから1秒以上連続して表示されていること
  • 動画(インストリーム)の場合ピクセルの50%が描画されてから2秒以上連続して表示されていること
■2014年12月3日
5 Factors of Viewability
Googleがディスプレイ広告のビューアビリティについて、56.1%の広告がビューアブルとは認められないという調査結果を発表
■2014年12月16日
MRC Viewable Ad Impression Measurement Guidelines
IABは、広告のビューアビリティ100%を実現することは、現状では困難という認識をあらためて示し、実現へ向けて2015年に業界が守るべき7つの原則を発表

  1. すべての請求は、キャンペーンで配信されたインプレッション(Served Impressions)の数をもとに行なうことを継続し、2つのカテゴリ「Measured(測定されたインプレッション)」「Non-Measured(測定されていないインプレッション)」に分けるべきである。
  2. 現在のテクノロジーの限界、およびパブリッシャーの測定に30~40%の相違が見られたことから、2015年は、閾値として、測定されたインプレッションで70%のビューアビリティを固守することを推奨する。
  3. キャンペーンが70%のビューアビリティを達成できない場合、パブリッシャーはその閾値を満たすまで、追加のビューアブル・インプレッションを補填するべきである。
  4. 上記の補填は現金ではなく、適切な時間の枠内での配信によるものとする。
  5. 242,500ピクセルかそれを超える大きな広告フォーマットの場合、その広告のピクセルの30%が最低でも1秒間ビューアブルであれば、ビューアブル・インプレッションと計測される。
  6. バイヤーとセラーの間のすべての取引は、MRCが認証したベンダーのみを使うこと。
  7. バイヤーとセラーは事前に、ひとつの計測ベンダーについて合意すること。
■2015年3月
Toward Viewability: You Can’t Count What You Haven’t Measured
Googleが広告のビューアビリティに対する考えを示す

  1. ビューアビリティ率は重要でない。ビューアブルインプレッション数にフォーカスすべき
  2. ビューアビリティの単一の業界標準を採用すべき
  3. 計測上の矛盾を解決する
■2016年6月1日
ビューアビリティに関するJIAAステートメント
JIAAがビューアビリティの定義の明確化、ビューアビリティをベースとした測定環境の整備に取り組んでいくという声明を発表

3.ビューアビリティの計測

ビューアビリティの計測については、中立なサードパーティベンダーを導入するべきとする考えが徐々に広がっています。プラットフォーム・ワンのDSP「MarketOne」やフリークアウトのDSP「FreakOut」は コムスコア「vCE®」と連携、AOLプラットフォームズ・ジャパンはDSP「ONE by AOL: Display」およびアドネットワーク「Advertising.com」においてMOAT Inc.と連携しました。視聴行動分析サービスを提供するニールセン株式会社もビューアビリティツールプロバイダー企業との協業を通じ、デモグラフィック属性別ビューアビリティ指標を開発しました。

こうした流れは大手パブリッシャーも同様です。米YahooはcomScore、DoubleVerify、Integral Ad Science、Moatという4社のサードパーティを導入、広告主はこれらのツールを使って同社の広告のビューアビリティ計測をすることができます。Facebookも広告の計測にMoatを導入、Instagram内の広告にも展開するとしています。

しかし、Googleにおいては自社で開発を進めるビューアビリティ計測ツールの「Active View」をGoogle Display Networkに導入、いずれDoubleClick for Advertisesにも統合し、提携パブリッシャー向けにも提供すると発表しています。

4.パブリッシャーのためのビューアビリティ対策

ビューアブルインプレッションが広告取引の新しい指標として取り入れられつつある中で、メディア収益を高めるためには、広告枠をビューアブルにする努力が必要です。では広告枠をビューアブルなものにするためには、具体的にどうしたらよいのでしょうか。各社が発表しているビューアビリティについての調査結果を参考に、2つのポイントをまとめてみました。

ビューアビリティは以下の数式で算出されます。
viewability
つまり、①を増やし、②のうちの無駄な配信インプレッションを減らすことでビューアビリティの向上を計ることができます。

①ビューアブルインプレッションを増やす施策

○ユーザーの目に付きやすい位置に広告を配置する
ページ内で最も広告が目に付きやすいのはページトップではなく、ファーストビュー(Above the fold)の下限の少し上あたりです。この位置に広告を配置することでビューアブルインプレッションを増やす事ができます。
○ユーザーの目に付きやすい広告フォーマットを採用する
スクロールの影響を受けにくい縦型バナーやフローティング広告、インタースティシャル広告を採用しましょう。さらに、レスポンシブ広告を採用し、画面サイズにあった広告を配信することで、ビューアブルインプレッションを増やす事ができます。
○ページと広告の読み込み速度を上げる
画面に広告が表示される前にスクロールされてしまうことを避けるため、ページと広告の読み込み速度を上げる必要があります。古い(最新でない)広告タグは広告遅延を発生させる場合があります。最新の広告タグを設置し広告表示時間を短縮しましょう。ページスピード高速化についてはこちらの記事で詳しく解説しているのでぜひ参考にしてみてください。

②無駄な配信インプレッションを減らす施策

○画面に表示されていない広告を読み込まない
ユーザーがスクロールをして、広告が画面内に表示されるタイミングで、初めて読み込みを実行する遅延ローディング(Lazy loading)という手法があります。遅延ローディングは転送量を節約しページ表示を高速化するための技術ですが、広告の読み込みに活用することで画面に表示されていない広告を読み込まず、無駄な配信インプレッションを減らす事ができます。ページが縦に長くなりがちなスマートフォンサイトで有効な方法です。ただし、広告のサイズが大きすぎる場合やユーザーが広告の読み込み速度よりも早くスクロールした場合には、広告の表示が遅れてしまうので実装には注意が必要です。

また、ユーザーとのエンゲージメントが高いコンテンツはサイトへの滞在時間を増やし、広告の視認性も高めるという調査結果も出ています。コンテンツの質を高めるというパブリッシャーにとって本質的な取り組みが、結果的に収益性の向上に繋がります。

参考サイト

5.ディスプレイ広告の課題

ビューアビリティについて詳しく解説してきましたが、ディスプレイ広告を取り巻く課題はまだ山積みです。ビューアビリティについての議論から、「その広告を見ている(と計測されている)のは人ではなくbotではないか」「Cookieだけで人が見ていると見做すのは危ないのではないか」という議論に発展し、ボットなどの(人間以外の)機械によって広告の表示回数・クリック数が計上されてしまっている広告詐欺(Ad Fraud/アドフラウド)が問題視されるようになりました(※1)。また、そもそもディスプレイ広告がクリックされなくなっているという実情(※2)や、更にはサイトに広告を表示させないようにするアドブロックツールの利用者が海外を中心に急増しており、広告業界全体で深刻な問題となっています。

これらは広告主側から端を発した課題ではありますが、解決へ向けては広告業界の各プレイヤーがそれら課題について認識し、対策を打っていく必要があります。パブリッシャーもその一端を担っていることは言うまでもありません。業界標準を満たす広告を開発し、広告価値を向上させることを、パブリッシャーは業界全体から期待されているのです。

注釈:
1:こうした課題のソリューションとして、広告主のブランドを守りながらビューアブルなインプレッションを買い付ける事ができる「アドベリフィケーションツール」が開発された。
2:米国の調査によると、1996 年 には“バナー広告”の平均でクリック率は 2%以上あったが、2012 年以降は 0.04%を 切るようになっている(JIAA ネイティブ広告ハンドブック 2017 より)。広告がユーザーの興味を惹かなくなってきているという課題から、サイト/アプリのユーザー体験に合わせ、コンテンツの一部として見てもらうことを目的とした「ネイティブ広告」が注目を集めている。

まとめ

  • ビューアビリティとは広告が閲覧できる状態にあるかを測る指標ですが、どういった状態がビューアブルであるかという業界共通の定義については定まっておらず、現在も議論が為されています
  • ビューアビリティの計測については、「中立なサードパーティベンダーを導入するべき」とする考えが徐々に広がってきています
  • ビューアビリティをはじめとしたディスプレイ広告の課題は山積みですが、業界全体で課題解決に向けて動いており、パブリッシャーも業界標準を満たす広告の開発を期待されています

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