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【B-2】先行者優位なのか、事業会社におけるDMP導入事例 – ad:tech Kansai 2014 セッションレポート

hd_logo2014年10月23日に新生活情報メディア「Lidea(リディア)」を立ち上げたライオン株式会社。立ち上げの背景には同社が抱える様々な課題がありました。その課題を解決する手段の1つとして、今回のLideaには、4社のパートナー企業とともに構築した最新のDMPが活用されています。

日本のトップブランドである「ライオン」が現在抱える課題とは?DMPを構築した背景とは?そしてその実態は?

このセッションでは、ライオン株式会社の中村大亮さんと共に、エージェンシーを代表して株式会社大広の澤田善郎さん、DMP導入を推進するコンサルティング会社を代表して株式会社Cloud-Innovationの河野矢薫さんによって、DMP導入から活用までを、事例を交えながら幅広いテーマでディスカッションが行われました。セッションのモデレーターは、株式会社mediba最高マーケティング責任者の菅原健一さんです。

ライオンが抱えていた課題とは?

このセッションは、ライオンが立ち上げた「Lidea(リディア)」というメディアと、新しく構築されたDMPの事例を元に話が展開されます。

まずはじめに、そもそもこれらを構築する背景となった現在のライオンが抱えている課題について、下記のスライドをもとに中村さんから説明がありました。

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現在ライオンが抱えているユーザーとのコミュニケーションにおける課題は大きく5つあります。これら5つをまとめると、「様々なコンテンツやデータが散在し、お客様ごとに、適切なときに、適切な内容を、持っているデバイス環境に適した適切な方法で情報が提供できていない」といえるでしょう。これらの課題を解決するために今回ライオンは「Lidea」という新しいメディアを立ち上げ、そのなかでDMPを導入しました。

Lideaはブランドサイトと何が違うのか?

当然これまでライオンは、メーカーとして様々な情報を顧客に提供してきました。では従来のブランドサイトと今回新しく立ち上げたLideaは、一体どこが違うのでしょうか?

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中村さんは、「ブランドサイトは、よりブランドにより近い情報を出しているのに対して、Lideaは周辺情報から生活情報までをカバーするものである」と言います。つまり、消費者とのコミュニケーションの入り口をより多く持つということです。そして今回、Lidea立ち上げと同時に、ライオンはDMPの導入もあわせて行いました。

これまでのライオンのコミュニケーションとは?

4ブランドが消費者にメッセージを発信するときには必ず目的があります。その目的を達成するために、どのユーザーにどのようなニーズがあるのか?どのような情報を伝えると効果的なのか?を考え、さまざまな手法でメッセージを発信します。中村さんは「これまでのライオンは、目的を決めるとすぐに手法に走っていた」といいます。つまり目的を決めると、どのような手法でメッセージを伝えるかばかりを考え、誰に何を伝えるのか?という本来目的と手法の間にあるコミュニケーションの根幹部分が抜け落ち、結果的に一方的なコミュニケーションになっていたということです。

では、どのように抜け落ちている部分を補っていくのか?どのようにユーザーごとに最適なメッセージを最適なタイミングで届けていけばいいのか?この課題の1つの解決策として出てきたものがDMPです。

そもそもなぜメディアで解決しようとしたのか?

DMPの詳細に話を移すまえに、そもそもなぜこれらの課題をさまざまなソリューションがある中で「メディア」と「DMP」いうソリューションで解決しようとしたのか?という疑問が湧いてきます。

前述のように、現在ライオンはブランドメディアを使って顧客とコミュニケーションを行っています。コントロールしている情報はブランドの情報です。しかし、よりユーザーライクな情報、ユーザーに有益な情報を自社でコントロールして提供するためにはオウンドメディアの構築が必要だったと中村さんは言います。

一方で、ブランドメディアやオウンドメディアなど様々なチャネルでユーザーごとに異なるメッセージを送るためには、何かしらのデータが必要になります。そのために「強力な1st Party Dataが欲しかった。3rd Party Dataに大きく頼りたくなかった」と中村さん。その理由を「3rd Party Dataに依存すると、すべてのマーケティングを最適化する理想からは離れてくるから」と説明してくれました。

本来オウンドメディアの立ち上げとDMP導入はそれぞれ独立した施策です。DMPだけを導入することもありえますし、オウンドメディアの立ち上げだけおこなうこともあります。しかし今回はLideaのプロジェクトとDMP導入のプロジェクトを2年前からほぼ同時にセットで進めたそうです。中村さんによると、「表のコミュニケーションの解決と、裏側のデータの持ちかたをセットで解決しようと思った」からだそうです。

データの大切さは数年前にクックパッドの例を参考にしたといいます。現在クックパッドは季節ごとの検索情報などを外部販売しています。ライオンの場合、データそのものを販売することはないですが、生活情報をとりまとめて、たとえば店舗さんなどの販売パートナーに効果的に提供できれば、売場作りに役立ててもらえるのではないか?と思ったそうです。

DMP導入のKPIは存在しない

DMP導入を検討するときに多くの会社はKPIやゴールの設定をします。いいかえると、DMP導入の投資が成功だったのか失敗だったのか?を判断するための何かを定義します。ではライオンではDMPを導入する目的、KPIをどのように設定しているのでしょうか?この問に対して中村さんは次のように語っています。

DMPはツールなので、KPIはありません。DMP導入そのものにKPIはないんです。しかしながら、当然各ブランドやプロジェクトにはゴールや目標があります。よって、あえてKPIは何か?という問に対して答えるなら、プロジェクトのKPIがDMPのKPIということになります。たとえば今回新しく発表したLideaでは、ユーザーの訪問数や訪問頻度などがKPIとして置かれますし、各ブランドもそれぞれ個別のKPIやゴールを持っています。DMPはそれらの大きなゴールを達成するためのツールであって、ツールそのものにKPIはありません。それはGoogle Analytics導入に対して皆さんがKPIをもっていないのと同じ話だと思います。

たしかにDMPをGoogle Analyticsと置き換えた場合、Google Analytics導入に対してKPIを持っている会社はないでしょう。プロジェクトのKPIを計測したり、達成するためにGoogle Analyticsを入れているのであって、プロジェクトのKPIが未達だったからGoogle Analyticsをはずすという判断をすることはありません。中村さんはDMP導入はGoogle Analyticsを導入することと同じことであると強調していました。

このように各プロジェクトのKPIをDMPのKPIと定義すると、当然DMPを会社全体で使っていく場合、そのすべてのKPIがDMPのKPIとなるため、DMPが背負っているKPIの種類は膨大になります。今回のライオンのケースでは、「広告の最適化やプランニングはもちろん、LidiaのPV数、それを達成するための様々なアクション1つ1つの目標など」(中村さん)がDMPで背負っているKPIであり、たしかに多くの役割をこのDMPに課しているようです。

しかしながら、現在DMPを導入している多くの企業は、広告の最適化にDMPを導入しようと考えていると思います。それに対しては中村さんは

広告の最適化だけのためにDMPを導入しても絶対に回収できない

と断言します。「たしかにはじめは広告の最適化が目的でもいいと思いますが、そこからコミュニケーション、そしてマーケティング全体に最終的なゴールを置かなければ、広告の最適化だけでDMPのコストをペイしようとすると難しいと思う」とアドバイスをしていました。

DMP導入の全体像

具体的に今回ライオンはDMPをどのようなことに利用しているのでしょうか?下記のスライドが非常にまとまっています。DMP各社の資料の中でよく見る「分析・セグメント生成」そして「アクション」の図です。

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データの蓄積では、これまで行われていた広告効果測定、アクセス解析に加え、オフラインのデータやLideaの会員データなども蓄積されています。そこからユーザーの徹底的な分析、セグメント化、ユーザーディスカバリーを行い、そして最終的にはユーザーに適したコンテンツを出したり、メールをクラスターによって出し分けたり、DSPの運用効率をあげていくようなアクションに使っているようです。また、ライオンならではの活用方法としては、「お掃除分野やお洗濯分野などの生活情報のデータをとりまとめて販売店さんに提供したり、それらのデータをセールスチームが活用したりすることで、店舗内シェアの拡大につなげていくこともDMPの1つの大きな役割」(中村さん)と紹介してくれました。

ここでパネリストのみなさんとモデレーターの方から、今回のDMP導入について質問の手があがりました。

DMPを使う上でユーザーのセグメント化の部分が肝だと考えていますが、どうしても分けがちになると思います。適切なユーザークラスタの構築はどのようにおこなっているのでしょうか?(澤田さん)

「現在はそれらの分析や最適化はパートナー会社さんにやってもらっています。最近はDMPやデータ解析をなるべく社内で行っていくインハウス化の流れがありますが、うちは完全に逆張りで、徹底的に外の会社さんを使う代わりに判断をとにかく高速ですることにこだわってやっています。」

なぜインハウス化しないと意思決定したのでしょうか?(菅原さん)

「現在の人材コストや採用の難易度が上がっている市場環境、またライオン全体の組織構造を冷静に見た時に、インハウス化を進めるのはいま我々が求めているスピード感に対してあまり良い結果が出るイメージがありませんでした。したがって自分たちではできないことは外の会社さんに徹底的にお願いして、自分たちは出てきたものを10倍のスピードで判断しようということになりました。」

DMPを使った様々なアクションに対するPDCAはどの程度の頻度で回しているのでしょうか?(河野矢さん)

「これはアクションの内容によります。DSPなど広告系の施策だと2週間に1回程度見ています。自社メディア系の施策であれば、記事別データやアクセス数などはデイリーで見てPDCAを回しています。」

オフラインメディア、マスメディアの情報も将来的にはDMPに導入していくのでしょうか?(澤田さん)

「個人的には見据えていきたいと思っています。たとえばどのようなクリエイティブが効果的なのか?露出の時間帯や露出量(GRP)はどの配分が適切なのか?などのデータは当然将来含まれると思っているし、いくつかのブランドではテストも開始しています。現在はデータ解析会社にそれらのオフラインのデータ解析もお願いしています。将来その結果を代理店さんに共有して、実際の広告運用に活用していきたい思っています。」

DMP導入における代理店の役割

今回のライオンのDMP導入では、ロックオンFreakOutScaleOutそしてloglyの4社がパートナーとして参加しています。この顔ぶれを見てみると、広告代理店が入っていないことに気づきます。DMPなどのマーケティングツール導入の中で代理店はどのように機能していくのでしょうか?代理店の役割に関して、株式会社大広の澤田さんは次のように語っています。

「代理店は顧客の課題やソリューションを制限ない柔軟な発想で提案できることが強みだと思っています。顧客やサービス、他社さんとの比較のなかで適切にコーディネートしていく役割は、やはり代理店(Agency)がもっともふさわしいのではないかと考えています。もちろん結局1人1人の個人の能力、人の問題になると思うのですが」(澤田さん)

これについては、中村さんはこのように語っています。

「今回DMPを使って蓄積されたデータは、今回の4社さん以外であってもパートナー会社さんにどんどん提供していき、『こういうサイトではこういうことが起きていて、こういうところでこういうことが起きているからこういうコミュニケーションができるのではないですか?』と様々なご提案をいただきたいと思っています。そのためのお膳立てまでを今回のDMP構築でおこなって、その材料から様々なものを再構築していく部分は、その専門家である代理店さんにももちろん助けていただきたいと思っています」(中村さん)

どの会社と組むかより、誰と組むか

では、いったい中村さんは様々なベンダーの中からどのようにこのパートナーベンダー群を選んでいったのでしょうか?キーワードは「人」でした。

「先ほど澤田さんの話のなかで人の能力の話が出ましたが、本当に人が大切なんです。今回DMP導入に際してはロックオンさん、FreakOutさん、ScaleOutさんそしてloglyさんの4社とやらせていただいていますが、会社で選んだというよりは、人で選びました。ほぼ全員担当者も指定して、担当が変われば変えちゃうよ、くらいの意識で取り組みました。そのくらい『どの会社とやるのか』以上に『どの人とやるのか』のほうが大切なんです」(中村さん)

加えてこのように語っています。

優秀な人についてもらえばパフォーマンスは出ます。たとえば以前某プロジェクトで、とあるベンダーさんを使っていた時に(今回の4社以外)、他の広告主さんから『あの会社さん使ってるんですか?パフォーマンス出ますか?』と言われたことがあります。実はうちではパフォーマンスはそこそこ出ていたのですが、その会社では出てなかったのだと思います。そこの差はいったいどこにあるのか?と考えていくと、結局は担当者のスキルなんです」(中村さん)

このセッションで最も印象的だったのが、この「個人の能力の重要性」についてです。中村さんはその大切さを知っているからこそ、ad:techや様々なカンファレンスに参加をされてパートナー探しをしているそうです。カンファレンスに参加する最も大きな目的の1つがいい担当者と出会うためだそうです。そしてこの「個人の能力」というテーマは、このad:tech Kansai期間中の多くのセッションで語られていたテーマである点にも触れておきたいと思います。

広告代理店、導入コンサルティング会社から考えたDMP導入のポイント

ここまで、今回ライオンが新しく立ち上げた「Lidea」と、それに伴って導入されたDMPについて、様々なディスカッションが行われてきましたが、最後に様々な企業のDMP導入をこれまで支えてきた広告代理店と導入コンサルティング会社の立場から、DMP導入、DMP活用へのポイントが紹介されました。

澤田さんは、DMPを活用したマーケティングに代理店がどのように関わっていくべきなのかについて、4つのポイントがあると言います。

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「エージェンシーがDMPを活用する場合のポイントは4つあると考えています。

1つ目は、企業のマーケティングの戦略と戦術を一気通貫で設計することです。企業のマーケティングの戦略と戦術をつなぐものがDMPなので、まずこの一気通貫の設計がなければスタートできません。2つ目はアウトプットするプロモーションの幅、引き出しの数をしっかり確保して、オフライン・オンライン、店頭など様々な軸から適切なプロモーションを選択することです。3つ目は、インプットするデータのコーディネーション、つまりデータの目利きをしていくことが大切だと思っています。データ量が膨大になる中で、データ量が多ければ多いほどいいわけではありません。戦略を見据え、どのデータを有効的に活用していくのかを適切に判断していく必要があると考えています。最後にもっとも重要なことは、アウトプットにおける顧客のシナリオ設計です。これができなければエージェンシーを使っていただく意味がまったくないと思っています。DMPで構築した顧客のセグメント1つ1つに適切なシナリオとアウトプットを提案していくことがもっとも重要だと考えています。(澤田さん)

DMP導入をコンサルティングの立場から行っている河野矢さんは、DMPそのものの構築の重要性と共に、DMPを使いこなすチーム構築の重要性を強調します。

「DMPを導入する際には、DMPを効果的に運用できるチームビルディングを並行しておこなうことが重要だと考えています。DMPを構築するときには常に運用をイメージした設計にするということです。これは目の前のチームの話だけではなく、将来事業成長したときを見越した採用戦略など、中長期的なところも含まれます。DMPはあくまでツールですので、ゴールのイメージからどのようなチームでそのツールの運用に臨むのがベストなのかを常に考えていくことで、より有益にDMPを活用できると思っています」(河野矢さん)

最後に、モデレーターの菅原さんはこのように語っています。

これまでのDMPは、広告単体の広告の効率をあげていくこと、つまり広告における精度を上げていくところに使われていました。一方今回のライオンの最新事例では、マーケティング全体に対して効果の最大化を重視しています。従来の『広告に付随したDMP』から、より『マーケティング全体に波及していくDMP』へ、『よりユーザーを細かくして効率化していくDMP』から、『マーケティング全体の効果を最大化するDMP』へ、最新のDMP導入事例では、DMPそのものの役割が変化し、より大きく広がっていることは間違いありません

「DMP」という大きなテーマについて、クライアント、代理店、コンサルティングの異なった立場から、幅広い意見が飛び交う活気あるセッションとなりました。

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