今回のテーマは「ネイティブ広告」です。近年のスマートフォンの普及によってフィード型のメディアが増え、インフィード型やレコメンド型を中心に見かける頻度が高くなったネイティブ広告。従来のバナー広告と異なるため、メディアにとって新しいマネタイズの機会でもあります。今回はネイティブ広告登場の背景から、最新のネイティブ広告の定義など、基礎的な部分を解説して行きたいと思います。
ネイティブ広告が登場した背景
ネイティブ広告は2つのインターネット広告環境の変化から出発しました。1つ目は「スマートフォンの普及」、2つ目は「ユーザーの広告忌避活動」です。
まず、「スマートフォンの普及」について説明します。従来使われていたガラケーと現在普及しているスマートフォンには「画面サイズ」と「コンテンツのリッチさ」という大きな違いがあります。スマートフォンの画面はガラケーに比べて大きく、かつ通信技術の発展によってリッチな画像や動画の読み込みも早くなったため、膨大な情報をスマートフォン上で閲覧することが可能になりました。そのため、従来PC上でのみ配信されていたバナー広告がスマートフォンでも表示できるようになりました。しかし、PCよりは小さいスマートフォンの画面に従来のバナー広告が表示されると、広告の画面占有率がPCと比べると増えるため、サイトのデザインに馴染まなかったり、コンテンツ以上に広告が目立ってしまったりと、ユーザーにとって印象が悪くなるケースがありました。
2つ目のインターネット広告環境の変化は「ユーザーの広告忌避活動」です。バナー広告が誕生して約20年経ち、ユーザーはバナー広告に目が慣れてしまったことで、ターゲティング機能や広告主が増えているにも関わらず広告への関心が薄れていきました。そのため、近年のCTRは2014年には0.05%以下、2015年には0.08%以下、2016年には0.013%以下となっており、ユーザーの広告忌避活動は今なお進行しています。ただし、インターネット広告業界もこの現状を把握していないわけではありません。ユーザーにとって広告を忌避されるものから、ユーザーに好かれるもの(受け入れられるもの)に変えていこうという動きが始まりました。それが「受け入れられる広告宣言」です。IAB(米国に本拠地を置くインタラクティブ広告業界団体の Interactive Advertising Bureau)が「LEAN」と呼ばれる積極的なユーザー主義の広告指針を打ち出しました。
- L:Light=コンテンツを邪魔しないように軽い仕様
- E:Encrypted=暗号化されている
- A:Ad choices support=広告を見る見ないやターゲティングに関するユーザーが選択できる
- N:Non-invasive/Non-disrupEve=コンテンツを閲覧するユーザー体験を損なわないデザインにする
このようなユーザー主義の広告方針を打ち出し、広告へのネガティブな印象をなくそうとして生み出されたのが”ネイティブ広告”なのです。
現在のネイティブ広告とは
さて、現在では様々なメディアで目にするネイティブ広告とは、どんなものなのでしょうか。ネイティブ広告に関して様々な団体がまとめていますが、共通する部分をピックアップしてみると以下のようになります。
- 広告枠と編集コンテンツ枠のデザインがほぼ同じでメディアに広告が馴染んでいる
- ユーザー体験を重視している
- 目につきすぎる、コンテンツの邪魔をする広告のNG
- ユーザーのメディア体験と広告の体験が同じである
- リンク先はコンテンツが中心、直LPは望ましくない
- 媒体社の新たな収益源として期待されている
- 効果が下がっている従来型のネット広告の代替として期待されている
過去には、ネイティブ広告=「記事広告/タイアップ広告」ではないかという議論もありましたが、現在のネイティブ広告の主流な定義は「コンテンツに誘導する広告枠」のことを指します。
ネイティブ広告におけるコンテンツとは
次にネイティブ広告におけるコンテンツの定義を説明します。ネイティブ広告におけるコンテンツは、「媒体社が管理するスポンサードコンテンツ」と「広告主が管理するブランドコンテンツ」の2種類に分けられます。広告掲載媒体にあるネイティブ広告から、同じサイト上のスポンサードコンテンツに飛ばすものと広告主の任意のページ(自社ブランドサイト、広告主のSNS等)に飛ばすものです。
特に「広告主が管理するブランドコンテンツ」にユーザーを誘導したい場合は注意が必要です。ネイティブ広告枠の画像や見出しが同じだとしても、そのリンクを踏んでユーザーが訪れたページがランディングページのような唐突に資料請求や申込に誘導するページではユーザーのコンテンツ体験が損なわれるため本当のネイティブ広告ではないと「ネイティブ広告ハンドブック2017」では説明されています。
ネイティブ広告の取引形態
次にネイティブ広告の取引形態を見ていきましょう。ネイティブ広告の取引形態は大きく分けて以下の3種類があります。
どの取引形態をとるかは、広告主、代理店、媒体社の運営ポリシーによって異なります。実際に上記3つのどのケースでも取引は行われており、後述するネイティブ広告の種類によっても取引形態は異なってきます。
ネイティブ広告のフォーマット
最後に、ネイティブ広告の様々なフォーマットを押さえておきます。IAB では、ネイティブ広告とは、「形式 form」と「機能 function」が、 広告が掲載される場所に合ったものと定義付けており、フォーマットを大きく6つに分けています。
- インフィード型
- ペイドサーチ型(検索連動型)
- レコメンドウィジェット型
- プロモートリスティング型
- ネイティブ要素を持つインアド型
- カスタム型(その他)
現在日本で普及しているのは、「インフィード型」と「レコメンドウィジェット型」です。しかし各種類の中でもフォーマットが多様化しており、海外事例なども含めると形状はどんどん複雑化しています。これはネイティブ広告の特性上、あまたのWebサイトやアプリのコンテンツにネイティブ広告のデザインが合わせられるからです。媒体社は、自社メディアに合うネイティブ広告を模索する必要があります。
次回の告知
いかがだったでしょうか。後編では、日本で普及が進んでいる「インフィード型」と「レコメンドウィジェット型」のネイティブ広告の解説と、広告主さま・媒体社さまの現場の声をお伝えしていこうと思います。
参考元一覧
- ネイティブ広告ハンドブック 2017
一般社団法人 日本インタラクティブ広告協会(JIAA)
http://www.jiaa.org/download/JIAA_nativead_handbook.pdf - THE NATIVE ADVERTISING PLAYBOOK
IAB
https://www.iab.com/wp-content/uploads/2015/06/IAB-Native-Advertising-Playbook2.pdf
Special Thanks
- 株式会社logly 代表取締役 吉永 浩和 さま
- 株式会社fluct 内村 一行