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Advertising Week Asia 2017 セッションレポート

2017.06.26 959view

2017年5月28日から6月1日の4日間に渡り、六本木ミッドタウンで開催されたAdvertising Week Asia 2017に参加してきました。fluctからは立場や職種関係なく、多くの社員がイベントに参加し、業界トレンドを肌で感じてきました。本レポートでは、イベントの概要と、注目したテーマ「動画広告」と「デジタル広告の透明性」に分けてレポートしていきます。

Advertising Week Asia 2017概要

Advertising Week Asiaは今回が2度目の開催です。2016年の初開催時と同じく六本木ミッドタウンのホール&カンファレンススペースで一日を通して様々なジャンルのセッションが行われました。イベントテーマはマーケティング広告テクノロジー及びエンターテイメントで、初日はオープニングイベントのみ、2日目から4日目は業界の第一人者が7つの会場に分かれ講演を行いました。
4日間のスケジュール(2日目以降は基調講演のみ記載)は、以下の通りです。

5月29日(月)
オープニングガラ テーマ「eスポーツ」

5月30日(火)

「仮想現実を収益化する方法」
JPWインターナショナル・テクノロジー 元HTCプレジデント(北アジア担当) HTC, 創設者兼CEO ジャック トン氏
「新国家主義の時代におけるブランド グローバル型・地域型それぞれの行方」
CNN International Correspondent Manisha Tank氏
マッキャン・ワールドグループ グローバルプレジデント ルカ リンドナー氏
「個性を活かして生きる」
株式会社SUBARU 代表取締役社長 吉永泰之氏
「WHERE IS THE KEY? -How Digital Media is Transforming Life and Business in China」
テンセント コーポレート・バイスプレジデント スティーブン チャン氏

5月31日(水)

「次は何? 変わり行く世界におけるフェイスブック」
フェイスブック チーフ・プロダクト・オフィサー クリス コックス氏
「ブランドの知名度を高めるために」
クリスピン・ポーター+ボガスキー 共同創立者・会長 チャック ポーター氏
「ブランド・コマース:ポスト95向けにユーザー体験を改造」
Isobar グローバルCEO ジーン リン氏
「Getting Smarter with Data – Using Machine Learning to Power Your Marketing」
グーグル マネージング ディレクター グローバル・ディスプレイ&プログラマティック ダン テイラー氏

6月1日(木)

「日本マクドナルドのビジネス転換とカスタマー・エンゲージメント」
日本マクドナルド 代表取締役社長兼CEO サラ カサノバ氏
「エージェンシーの未来はアナログ」
CHEIL WORLDWIDE Global Chief Creative Officer Malcolm Poynton氏
「ディスラブションからイノベーションへ 革新へのアプローチを一新させる」
TBWAワールドワイド 会長 ジャン=マリー ドリュ氏
「メディア・トランスフォーメーション」
プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社 代表取締役 社長 スタニスラブ べセラ氏


基調講演以外にも数十ものセッションが行われていました。テーマは多岐にわたっていましたが、その中でも多く飛び交っていたのは「プログラマティック広告の活用方法と課題」「広告体験の生み出し方」「動画広告の活用方法」「機械学習やAI」などです。

実際にイベントで話されていた内容は、Advertising Week Asia 2017のサイト内でセッション動画でも確認することができます。時間のある方や、実際の講演内容でニュアンスを確認されたい方はご覧になられると良いと思います。

このようなテーマの中で、株式会社fluctの立場から特に注目したのは、「動画広告」と「デジタル広告の透明性」です。次章よりAdvertising Week Asia 2017に参加したfluctの経営陣のレポートをご紹介します。

テーマ「動画広告」
株式会社fluct 執行役員 今井 悠介

今回のAdvertising Week Asia 2017では、動画広告をテーマとしたセッションを中心に可能な限り参加してきました。業界の第一人者の方のディスカッションを浴びるように聞くことが、自分の頭の中を整理するのに非常に役立ったので、動画広告が今後どのように国内で活用されていくかについてまとめてみたいと思います。

まず前提として、動画コンテンツのインターネット化が日本でも急速に進んでいるのは言わずもがなでしょう。YouTubeやニコニコ動画など一部のサービスを通じて、以前から動画コンテンツが消費されていましたが、最近ではInstagramやFacebookなどのSNS、C CHANNELやDELISH KITCHEN、kurashiruに代表される分散型動画メディアの急速な普及は、近年の大きな動きと言えるでしょう。サイバーエージェント社も、藤田代表取締役自身が公言する通りAbemaTVに全社を上げて注力しています。また、テレビ局側も民放公式テレビポータル「TVer(ティーバー)」だけでなく、各局がオンデマンド放送に注力しています。さらにはテレビのデジタル化もすでに起こっており、Apple、GoogleやFacebook、AmazonなどがすでにインターネットTV領域に本格参入することを発表しています。東京オリンピックに向けて総務省などがサイマル放送同時並行放送のこと。やインターネット環境のさらなる整備を進めようとしていることもこの動きを後押しするでしょう。
このように、日本でも動画コンテンツが急速にインターネット上に増えてくることは自明です。ケーブルテレビ文化の強いアメリカでは早くからインターネット上に多くの動画コンテンツが存在していたため、デジタルでの動画広告の活用も進んでいましたが、日本でも同様の流れが強まってくることが予想できます。
そういった前提のもと、Advertising Week Asia 2017のセッションを通じて感じたことをいくつか書いていきます。

モバイルビデオ「次の波」
ファイブ株式会社 代表取締役CEO 菅野圭介氏
C Channel株式会社 代表取締役 森川亮氏

日本の、特に若者向けに動画コンテンツ体験を浸透させた立役者の一つでもあるC Channel株式会社は、今回のAdvertising Week Asia 2017で複数のセッションに登場していました。動画広告プラットフォームFIVEとのセッションでは、分散型動画メディアの定着、モバイル動画広告のテストフェーズから実運用への移行、テレビやOOHなどメディアミックスでのマーケティングなど、動画関連の多岐にわたるテーマが語られていました。一年以上前からモバイルビデオの領域で事業展開されている2社が、マーケティング観点、コンテンツ観点それぞれで、すでにテストフェーズから実運用・定着のフェーズに来ているというお話は非常に印象的でした。モバイルならでは、動画ならではのメッセージや活用の方法が事例とセットで紹介され、セッションの最後にはFIVE社の新たなチャレンジとしてモバイルビデオ×コマースのサービスリリースの発表も。モバイルの最先端はアメリカではなく中国だと語る菅野さんの次の一手に非常に注目です。
動画を軸にこれからさまざまなビジネスが実現していく可能性を感じるセッションでした。

Advertising Week Asia 2017 モバイルビデオ「次の波」 セッション資料より

動画広告からテレビCMへの予算の揺り戻し 〜米国プログラマティックTVと広告主の新策トレンド〜
株式会社デジタルインテリジェンス 代表取締役 横山隆治氏
株式会社デジタルインテリジェンス ニューヨークオフィス代表 榮枝洋文氏
資生堂ジャパン株式会社 Corporate Officer 音部大輔氏

また、デジタルインテリジェンス×資生堂ジャパンのセッションも非常に学びの多い内容でした。
米国テレビ広告業界の最大イベント『TVアップフロント』での最新事例の紹介からスタートし、テレビとの補完や連動を前提にマーケティングプランが組まれることでクリックやコンバージョンだけでなく「見られる」ことがデジタルでも求められるようになるといったことが語られていました。テレビで当たり前のことがデジタルでは当たり前ではなく、その課題を解決する目的でPMP取引、ビューアビリティやアドフラウド(そもそもテレビにフラウドはない)が注目されているというお話に、非常に納得感を覚えました。
テレビではリーチのしにくいティーン層が集まるアプリ経由の在庫をいかに活用するか、GRPだけでなく、質をどのようにデジタルとテレビで計測していくか、も重要になってくるという考えから、デジタルインテリジェンスでは指標の提唱もしているようで、テレビとデジタルの共通指標という観点が、テレビ予算のデジタル活用という文脈で次のブレイクスルーになり得ると感じました。

マス広告の逆襲 〜TVCMオンライン運用がもたらす速度革命〜
日本コカ・コーラ株式会社 マーケティング本部 IMC コネクションプランニング&メディア 統括部長 今西周氏
TBWAHAKUHODO Senior Creative Director 近山知史氏
Group IMD 事業開発本部マネージャー 田中郷資氏

コカ・コーラ×博報堂DY×GroupIMDのセッションでは、テレビ予算のデジタル活用を大きく前進させるだろう2017年10月からスタートするTVCMオンライン運用2017年10月より東京・名古屋・大阪を含む19局がCMオンライン運用を開始。搬送距離と時間の解消、業務効率改善、コスト改善が見込まれる。によるCM素材のオンライン送稿を軸に議論がされていました。テレビサイドで革新的な変化が起こるのでデジタルマーケティングのトレンドは今年大きく動くことが予想され、その中でグローバルでのテレビCMの活用事例の紹介や、オンライン送稿が実現することで、リアルタイムなトレンドに合わせたクリエイティブ、メッセージを届けることがいかにブランドにとって重要か、マーケティングにおいてエキサイティングな時代になるか、ということについて議論されていました。
他セッション含め、今回のAdvertising Week Asia 2017の動画広告に関する一連のディスカッションを通じて、いよいよ日本の動画広告が本格的に動き出したと感じました。

テーマ「デジタル広告の透明性」
株式会社fluct 本部長 内村 一行

まず始めに、なぜデジタル広告の透明性の重要性がここ最近強く求められるようになったのか、その背景についてまとめてみたいと思います。
日本では2010年以降、検索連動型広告に加えDSP経由でRTBによるプログラマティックバイイングが本格的にスタートしました。従来の純広告(予約型広告)による広告出稿と違い、プログラマティックバイイングは広告主が直接的に広告をリーチしたいオーディエンスに対して、リターゲティングなど様々な配信手法の組み合わせによりオークション形式で効率よく広告枠を購入することができます。また、3PASとの組み合わせによるダイナミック型バナー表示や広告効果計測などもしやすいことから広告投下に対するROAS(費用対効果/CPA・CPC)を意識する多くの広告主にも受け入れられました。
インターネット広告費(媒体費)と運用型広告費の割合 2012-2016

図1 電通 日本の広告費2012-2016のデータ

そして、図1からも分かる通りインターネット広告費に占める運用型広告費は2012年の51.2%から2016年では71.1%まで占めるようになりました。これはプログラマティック広告市場の新規参入プレーヤーが増えた事、また直接的なROAS(費用対効果)を求める広告主に加え、動画広告などのリッチアドの出稿もプログラマティック広告経由で行うことにより、認知や啓蒙などのブランドリフト(imp/リーチ)を目的とした広告主も徐々にプログラマティック広告を利用し始めた結果と言えるでしょう。そして、今後も自社データや外部DMPを利用したデータ連携によるプログラマティックバイイングなども更に伸びてくると思います。しかし、便利の裏には落とし穴もつきまとうのです。
それが、ここ最近頻繁に議論されるようになった3つの課題です。

  • ブランドセーフ:質の低い媒体や不適切な媒体への広告掲載によって広告主のブランドが傷つけられている
  • ビューアビリティ:広告がユーザーに見られていない
  • アドフラウド(広告詐欺):広告インプレッションやクリックが、人間ではなく、botボット。自動で処理を行うコンピュータープログラムのこと。を使って行われている

急速に拡大したプログラマティック広告が直面する喫緊の課題に対して、サプライサイド、デマンドサイド、広告主、広告会社の各プレーヤーがどう向き合っていくのか。特にサプライサイド、デマンドサイドのプレーヤーにとってはまさに「耳が痛い」問題です。しかし、この問題に向き合い、解決し、プログラマティック広告の透明性を担保することが今後の市場の拡大における重要なポイントとなるのです。
そんな前提の元、今回のAdvertising Week Asia 2017で一番印象に残ったセッションを取り上げた上で振り返ってみます。

デジタル広告に対するアカウンタビリティ、透明性のキーポイント
ニールセン株式会社 代表取締役社長兼COO Jun Miyamoto氏
ヤフー株式会社 コマースグループ ヤフオク!カンパニー 経営戦略本部長 高田徹氏
資生堂ジャパン株式会社 コミュニケーション統括部長 小出誠氏

セッションのポイントとなったのは、デジタル視聴計測の透明性と、計測指標の標準化がもたらす価値の2点です。

ブランディング広告の効果計測

消費者のデジタルメディアの接触時間が増加しています。電通の広告市場計測でもインターネット広告市場は1兆円を突破しました。動画広告の普及によりブランディング目的での広告出稿が増えてきましたが、ブランディング広告における効果計測はあいまいな状況が続いていました。

ブランドリフトの広がりを知るには正しいリーチ計測が必要であり、ニールセンではポイントを4つに絞っているようです。

  • アドフラウド(日本国内の広告全impsの6%)
  • ビューアビリティ(日本のキャンペーンのビューアビリティは平均48%)
  • ターゲティング含有率(本当に広告を届けたいユーザーに届けているか)
  • ユーザーのダブルカウント(デバイスを跨いだ1ユーザーを複数とカウント)

このような状況に対して大手広告主であるP&Gが「透明性のある取引を宣言」を行いました。

P&Gのチーフ・ブランド・オフィサー 兼 米広告主協会の会長 マーク・プリチャード氏のIAB米ネット広告団体 Interactive Advertising Bureauでの宣言

  1. MRC米メディア指標協議会 Media Rating Councilのビューアビリティ標準の採用
  2. MRCに認定された第三者機関による計測検証の導入(加えて、全てのメディアおよび計測ベンダーにMRC認定の第三者による検証を求める)
  3. エージェンシー契約の見直し(透明性)
  4. アドフラウド対策 - デジタルメディアに対するタグベースでの認定要求
  5. 上記を兼ね備えているメディアサプライチェーンを取引する

このような動きはまだアメリカで始まったばかりですが、同じく大手広告主であるユニリーバも追従するような動きを見せ、Facebook、twitter、Googleといったプラットフォーマーなども広告の透明性を担保する動きが始まっています。

一方、日本でも大手広告会社やメディアもプログラマティック広告におけるアドフラウド、ビューアビリティ、ブランドセーフの問題に取り組み始めています。例えばPMPなどの広告主が予め指定したメディアへ出稿するモデルは一部の広告主で広がりを見せていて、出稿先媒体のビューアビリティ率を担保することが可能になりつつあります。また3PAS経由でアドフラウドの自動判別を可能にするソリューションも存在しています。

広告主はそれらのソリューションを利用しながら最適なプログラマティック広告取引を推進することにより、より安全なブランディング広告出稿が出来ようになると思います。


いかがだったでしょうか。
数十あるセッションの中から注目したテーマをレポートにしました。このようなイベントに参加することで、興味関心のあるセッションはもちろんのこと、隣り合った領域や立場の違う方の意見を聞くことができました。fluctは社員がイベントに参加することが非常に多く、持ち帰った情報を社内勉強会やレポートとして展開したり、同業の方と共同でディスカッションする場を作るようにしています。

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