日本発!大ヒットハイパーカジュアルゲーム『Park Master』、各国ストアランキングを席巻した成功要因とは?

皆様こんにちは!fluctアプリソリューション本部の廣川&佐藤です!
今回は、指で線を描いて車をうまく駐車させる新感覚ハイパーカジュアルゲーム『Park Master』を企画・開発された面白法人カヤックさんに各国ストアランキング1位を獲得した秘密をお伺いしました!

お話を伺ったのは・・・

面白法人カヤック プロデューサー
畑佐 雄大氏

面白法人カヤック プロデューサー
畑佐 雄大氏

面白法人カヤック ディレクター兼エンジニア
佐藤 宗氏

面白法人カヤック ディレクター兼エンジニア
佐藤 宗氏

自己紹介

fluct佐藤:まずは皆さんの自己紹介をお願いします!

畑佐さん:プロデューサーの畑佐と申します。『Park Master』以外にもハイパーカジュアルゲームチームのタイトル全般を見ています。

佐藤さん:佐藤と申します、僕はディレクター兼エンジニアです。僕はゲームの実装全般も行うのですが、加えてゲームの企画もしています。

fluct佐藤:エンジニアさんが企画もされているんですね!

佐藤さん:はい。僕らのチームは少数精鋭でチームを組んでいるので、一人が複数の職能を兼務しています。

体制について

fluct佐藤:複数の職能を兼務されているとのことでしたが、どのような体制で運営されているのでしょうか?

佐藤さん:プロデューサー、ディレクター、エンジニア、デザイナーの計5〜6名です。

畑佐さん:僕はプロデューサーと兼務で、UA(User Acquisition:ユーザー獲得)、マネタイズ、その他いろいろ担当しています。その他というのは具体的にサウンドやレベルデザインですね。

fluct佐藤:『Park Master』のようなハイパーカジュアルゲームのタイトルでは、レベルデザインがかなり重要と伺っていますが……?

畑佐さん:はい。僕は前職で、大手ゲーム会社でゲームセンター向けのゲームを担当していました。その経験が今にかなり活きたと感じています。

fluct佐藤:具体的にどういったご経験でしょう?

畑佐さん:ゲームセンターのゲームは、遊ぶ前に100円を入れてもらわないといけない。また、遊んだらすぐに良い体験をしてもらって、ゲームオーバーになったらまた100円入れたくなるようなゲームデザインが求められます。
『Park Master』のようなハイパーカジュアルゲームにおいても、そういった「すぐに気持ちよさが分かる」「広告見たあとでももうちょっと続けてみたくなる」部分はかなり似ています。そのあたりが過去の自身の経験を活かせたポイントだと思います!

fluct佐藤:ありがとうございます!『Park Master』のゲームのレベルデザインで意識した点はありますか?

畑佐さん:ハイパーカジュアルゲームで求められるゲームの難易度は、ゲーセンのものとはぜんぜん違います。僕はずっとゲームをしてきたので、最初は『Park Master』を序盤から難しくしすぎてしまいました。そこは反省でしたね。ハイパーカジュアルゲームでは全くゲームをしたことがないユーザーさんにも受け入れられる、遊びやすいものにすべきでした。

fluct佐藤:ずっとゲーム業界に携わっていると、無意識にゲームのレベルが上がってしまいますよね。佐藤様はディレクター兼エンジニアということですが他にも兼務されているのでしょうか?

佐藤さん:はい!僕はエンジニア兼務でゲームの企画もしています。
うちのチームはエンジニアの企画から次のタイトルのアイデアが生まれることが多いです。エンジニアは全員Unityが使え、3Dモデラーを兼務している者もいます。「Unityを触っていたらこんなアイデアが思いついた!」というところから会話が始まることが多いです。

ハイパーカジュアルローンチまでの過程

fluct廣川:ハイパーカジュアルゲームがローンチするまでの過程を教えてください!

畑佐さん:過程は【プロトタイプ(試作品) -> ソフトローンチ -> 本ローンチ】と大きく3段階に分けることができます。
各段階でCPI(Cost Per Install:1インストールあたりのコスト)や、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)、IPM(Install Per Mile:1,000impあたりのインストール率)など様々な指標を置いており、それらの条件をクリアした場合に限り、次段階に進めます。
基本的に段階が進んで行くにつれ広告予算が増えていくので、データを元にかなりシビアに判断しています。

fluct廣川:指標に対して未達だと、そのタイトルは諦めるのですか……?

佐藤さん:最初は自分が作ったタイトルを諦めるのは辛かったですが、慣れてくるとパンチドランカーのように、ゾーンに入っていけます(笑)
ハイパーカジュアルゲームは「データドリブンでドラスティックに判断する」ことがかなり重要です。この判断の早さは意識しています。

fluct廣川:各社さんそれぞれの指標を開示されていてオープンな雰囲気を感じます……!

畑佐さん:そうですね。僕も開示する前は各社の記事を読んだり、話を聞きに行ったりしたときに同じことを感じていましたが、実際にしてみるとその指標をクリアするゲームを作るのが本当に難しかったです。

fluct廣川:ちなみに「プロトタイプ」の時点で指標をクリアするか確認するためにユーザー獲得をしていくと思いますが、予算はどうしていましたか?

畑佐さん:プロトタイプやソフトローンチの予算に関しては、事業部長や役員にハイパーカジュアルゲームのビジネスモデルをプレゼンをし、予算を組んでもらいました。

fluct廣川:なるほど。チャレンジを称賛するカヤックさんの社風ならではですね。プロトタイプはどういうスケジュール感で作られてますか?

佐藤さん:最近は1タイトルを3〜10日で制作……と、スピードにこだわっています。プロトタイプの開発スピードは成功する上でとても重要だと考えており、実際にストアに公開してテスト的にインストール広告の出稿を行います。このテスト出稿で一定の数値が出たら、本番用にゲームクオリティを上げ、ステージ数を増やしていきます。面白いゲームであるかは、ユーザーの評価が全てです。ハイパーカジュアルゲームのお作法に則っているゲームになっていれば、一旦公開をしてユーザーテストをすることを心がけていますね。

fluct廣川:プロトタイプはスピード感が重要とのことですが、質もこだわって作られるんですか?

佐藤さん:最初は質を意識して1プロトタイプに1ヶ月くらいかけて作り込んでいましたが、今はスピード感を最重要事項として意識しています。
数タイトル作ってみて「ゲームがユーザーにウケるかはテストをしないと判断できない」ことがわかったからです。先述した通り、スピード感と合わせてコンテキストは整えています。

Park Masterについて

誕生秘話

fluct廣川:もう有名な話だと思いますが、最初は自分たちだけでハイパーカジュアルゲームの開発を始められたんですよね……?

畑佐さん:そうなんです(笑)僕は会社にハイパーカジュアルチームがまだないころから、この領域の可能性を感じていました。社内で仲間を集めて企画・制作しはじめたのが始まりです。当時はメンバーが皆、別業務にあたっていたため、業務後に時間を捻出してハイパーカジュアルゲームのための時間に当てました。
企画が形になってから、事業部内でプレゼンして予算の獲得などを行いました。

USとヨーロッパの市場の違い

fluct廣川:直近リリースされた「ヨーロッパ圏でPark Masterが1位獲得」おめでとうございます!!
※参考:面白法人カヤックプレスリリース

畑佐さん・佐藤さん:ありがとうございます!!

fluct廣川:US1位を獲得された(2020年)1月24日から数ヶ月経っておりますが、ヨーロッパで1位を獲得する上で工夫されたことはありますか??

畑佐さん:USで1位を獲得出来れば世界で戦えると思っていました。
ハイパーカジュアルゲームの基本的な特徴でもあるのですが、言語や文化の壁が無いように設計しています。そのため、ヨーロッパに特化してデザインしたり、動画広告のクリエイティブを変えたりなどの特別な工夫はしていないです。
クリエイティブはUSもヨーロッパも全く同じです!言語も全部英語です。チームが小さいのでそこまで手が回らなかったというのも正直ありますが、志向はUSと割と似ているので、それでもうまくいったのだと思います。
ただしヨーロッパならではというとGDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)の対応が大変でした……。

fluct廣川:GDPRはヨーロッパ圏ならでは、ですよね。ちなみに『Park Master』の場合、ヨーロッパとUSでLTVに差分はありましたか?

畑佐さん:傾向としてはDAUもLTVもUSのほうが高そう、ということが見えました。
ヨーロッパとUS同時期のリリースではないので、はっきりと言えないのですが、『Park Master』の全体収益の約5〜6割をUSが占めています。USは世界的に見てもハイパーカジュアル市場が盛り上がっていると感じました。
また、LTVは7〜10日を指標としているケースが多いですね。

US1位獲得時のスクリーンショット
US1位獲得時のスクリーンショット

UAの成功要因

fluct廣川:ハイパーカジュアルゲームでUAを考える上で肝となる「動画広告クリエイティブ」に関してはどのようにPDCAを回されましたか?

佐藤さん:ゲームのプロトタイプが出来たら、動画広告クリエイティブの企画を練って、良いと思った事例を試して、実際にデータを見て……を繰り返し行ない、どうしたら良い結果がでるのかをひたすら研究していました。まさにPDCAです。
あとは他ゲームのインストール動画広告は意識的にチェックして、今どういうフォーマットがトレンドなのかを確認するようにしています。

fluct 廣川:今後ハイパーカジュアルゲームを作っていく上で活かしたい『Park Master』の成功要因はなんでしょうか?

佐藤さん:月並みかもしれませんが、「動画広告にした時にどうなるか」を逆算してプロトタイプを作ることですね。動画広告のシナリオを考えてから、ゲームに必要な物を考えてプロトタイプを作成していきます。
例えば、最近だと動画広告で「あえて失敗を見せる」などがトレンドかと思うので、そのシナリオの動画広告を作るためにはどういうゲーム設計にしたらいいのか……と考えますね!

畑佐さん:あとやはり「視覚的にどんなゲームか分かる」ように工夫して制作しています。ハイパーカジュアルゲームは、普段ゲームをやっていない人など誰でも気軽にプレイしてくれるのが特徴だと思うので、一番意識していますね。

感覚的にわかるゲーム性

リテンション施策について

fluct廣川:実際に『Park Master』で行われたリテンション施策についてお伺いします!

畑佐さん:ステージごとのレベルチューニングや、インタースティシャル広告の表示頻度の調整を継続的に行なっていました。
特にレベルチューニングはリテンションの改善に繋がりました。私が、もともとアーケードゲームを作っていたこともあり、当初はかなり難易度を高く設計してしまっていたので(笑)
リテンションレートを見ながら、諸段階ではもうすこし簡単にクリアできるようにチューニングを行なったところ、効果的なリテンション施策になりました。

fluct廣川:ちなみに改善によって無くした機能などはありましたか?

畑佐さん:はい。改善の中で線を引ける長さに制限をつけたこともありました。「制限ゲージ」を表示していたバージョンと、ゲージなしバージョンとA/Bテストを行なった結果、無い方がリテンション率が高かったので消す判断をしました。

fluct廣川:広告マネタイズに関してもお聞きしたいのですが、リージョン(国/地域)別に最適化などは行なっているのでしょうか?

畑佐さん:『Park Master』では特にリージョン別には行なっていないです。複雑にしすぎるとヒューマンエラーが起きるリスクがあるので、基本的にはグローバルで統一のルールにしています。本来であればリージョン別で広告配信を最適化したほうが良いと思いつつも、なにぶん少数精鋭での運営なので現状は行っていないです。

今後の展望

fluct佐藤:最後に、今後の展望をお願いします!

畑佐さん・佐藤さん:ヒット作をもっとたくさん出したいです!

畑佐さん:それから、ハイパーカジュアルゲームがもっとメディアとして評価されるようになる時代を作れるといいなと考えています。ハイパーカジュアルゲームにもっとブランド広告主の予算が入ってくることで、実現できると思っています。
また、広告の出し方ももっと工夫できたらいいなと。具体的にはユーザーあたりのターゲティングの精度を上げること、広告を表示する割合を個人に合わせてチューニングすること。この2点ですね。
あとは大前提ですが、このハイパーカジュアルゲームの市場自体の見極めをしたいと考えています。このトレンドがいつまで続くかわからないので、新しいトレンドが生まれたとき、いつもで波に乗れる準備をしておきたいですね。

fluct佐藤・fluct廣川:ありがとうございました!

ダウンロードはこちらから

https://apps.apple.com/jp/app/park-master/id1481293953

https://play.google.com/store/apps/details?id=com.kayac.park_master