株式会社ネットフロンティアに日本市場でしのぎを削るDSP各社の違いについて聞いてきました

現在、日本では多くのDSPが日々しのぎを削っています。いったい各社の違いは何なのか?どのように使い分けているのか?今回は複数のDSPを使った広告運用を行っている株式会社ネットフロンティアの奥川さんに、現在日本で展開しているDSPの違いや特徴についてズバッと聞いて参りました。

まずは奥川さんご自身、そしてネットフロンティアについて教えて下さい

株式会社ネットフロンティアは、1997年に設立されたデジタルエージェンシーです。設立から数年間は、サーチの運用に特化して事業を拡大させ、近年はそのノウハウをディスプレイ広告やソーシャルなどの分野に展開しています。現在、社員数は日本オフィスが約45人、それに加えベトナムやカンボジアなど海外オフィスに約20人ほどいます。
私は、2009年に広告運用としてネットフロンティアに入社して、1年後にセールスに異動、その後自社メディアの企画・運用を行う部署に移り、4年前から再度セールスを担当しています。実は私にかかわらず弊社では、セールスといっても営業がテレアポをして新規開拓をするようなことはしておらず、大半の時間を既存のお客様のキャンペーン全体の設計や分析、プランニングなどに使っています。ありたがいことに、現在お付き合いさせていただいているクライアント様の大部分が、他のお客様のご紹介だったり、担当者の方が転職をされたときに新しい会社でもご指名いただいたりと、お客様のご縁ではじまっているので、現在のお客様の満足度を上げることを大切にしています

奥川さんは現在どのようなお客様をご担当されているのでしょうか?

私が担当させていただいている中で特に大きめのお客様は、国際団体様、グローバルの大手コマースサイト様、化粧品企業様、人材系企業様などです。その他にも、他社の代理店さんの運用部分だけのお手伝いもしており、パートナーの代理店さんとクライアント様に同行をしたり、実は裏側で運用をしたり、一緒にプランニングをしたりもしています。

DSPは運用可能量とデータ量で選ぶ

多くのDSPの中から、どのように利用するDSPを選んでいるのでしょうか?

1-1まず、私たちが最も大切にしていることは、どれだけデータが見れるのか?ということです。したがって、「ブラックボックスで運用は最適化エンジンにすべてお任せください」というもの、「データはすべて公開しますが運用はサービス提供者側でやります」というものはすべて弾きます。自分たちで運用ができて、その中で出来る限りデータが見えるものを選んでいます。
わたしは、運用を自動で行うDSPを否定しているわけではありません。自動運用型のDSPはパフォーマンスがいいときは問題ありません。むしろ何もしなくていいので楽だし、運用負荷も大幅に削減できます。しかし、パフォーマンスが悪くなった時が問題なんです。自動運用型のDSPは、パフォーマンスが悪くなっても何もできないし、原因の推測もできません。これではお客様にパフォーマンスが悪くなった原因を説明し、リカバリー案を出すこともできません。だからこそ、自分ですべてのデータを見ながら責任を持った運用ができるDSPを選んでいます。
そのように作った初期検討リストの中から、予算や業種や目標や目的(CPAをとにかく守って獲得したい、リーチ広げたい、こういう層に当てたいなど)に沿って使うものを決めます。何を使うかの最終判断は、すべて担当のフロント営業が責任を持って行います。

クライアントさんから、このDSPを使って欲しいといった指定が入ることはありませんか?

よく「YDNは代理店A、CRITEOさんは代理店Bをすでに使っています」といった具合に、事業者さんごとに代理店さんを分けているクライアントさんがいらっしゃるのですが、私たちは、DSP指定のお取り組みは原則お断りしています。
CPAをゴールにした各代理店の競争を行うと、とにかくリターゲティングユーザーへのフリークエンシーを制限せずにCPMを各代理店が上げて、我先にと刈り取りに行きます。その結果、本質的ではないところにお客様の予算と多くのリソースが使われることになります。クライアントさんの予算が、自社キャンペーン同士で各DSP間で競わされて、ムダなコストが発生してしまいます。そういうことはしたくないので、基本的にはお断りしています。

具体的に現在お使いのDSPと、その特徴を教えて下さい

ここから先は、私がこれまでいろいろと運用をしてきた体験談として聞いてください。

Yahooディスプレイアドネットワーク (YDN)

一番の特徴は、もちろんYahoo JAPAN本体の枠に出せるということです。一方で、Yahoo JAPAN内の配信面とそれ以外にネットワークしている配信面でのパフォーマンス差が大きく、運用する際は注意しないといけません。場合によっては、Yahoo JAPAN内の配信面とそれ以外の配信面でキャンペーンを分けて、コントロールすることもあります。また、運用する立場から申し上げると、管理画面は若干イマイチかと思います。たとえば、「前月」や「今月」、「今週」などあらかじめ決められた期間でしかレポートが見れず、何日から何日と日付を任意で指定してレポートを見ることができません。もちろん、一度広い範囲でレポートを落としてきて、エクセルなどで加工すればデータは見れるのですが、ちょっと手間がかかってしまいます。もう少しレポートが使いやすいと助かります。

Google Adwords (GDN)

とにかくいろいろなデータが透明性高く見えること、そして世界最大の配信面、使いやすいUI、素晴らしいと思います。Google Analyticsと連携して、自由度の高いリターゲティングセグメントを作成できる点もありがたいです。現在利用していて、とくに大きな問題点や課題点は思いつきません。とくにデータ面の機能は豊富です。

DoubleClick Bid Manager

GDNと同様に、非常に使い勝手の良いDSPだと思います。最近はGDNでもできるようになったのですが、昔は視認範囲のCPMで入札(vCPM)できる数少ないDSPでした。ただ1点不満なことは、クリエイティブの大量入稿がすごくめんどくさいところです。セグメントが10個あって、それぞれに10個のクリエイティブを、別々のURLで入れようとすると、10×10で100回管理画面から入稿しないといけないんです(バルクシートやエディターでの入稿が不可)。実は使い始めた当時「まさかできないわけはないだろう」と問い合わせをしたことがあったのですが、グーグルの方に聞いてもできないとのことで、ここは早く改善をお願いしたいところです。

ScaleOut

大きな特徴は、au(KDDI)のデータが使えるところです。またインプレッション時にCookieを付与して、そのユーザーに対しリターゲティング配信もできるので、例えば、auのデータで東京都に居住している30代男性に初回配信をして、インプレッションリターゲティングを使ってそのユーザーへのフリークエンシーを厚めにするということも可能です。そして、レポートデータもかなり細かく見ることができます。サーチターゲティングのデータはターゲティング設定したキーワードとそのキーワードがトリガーになって配信されたユーザーの実際の検索クエリが出るので、その検索クエリをサーチ(リスティング)に活かせるので重宝しています。
また、配信ドメインとSSPを見れるのも嬉しいです。たとえばAというサイトに配信した場合、多くのDSPの場合、「サイトAに配信しました」、もしくは「SSP Bに配信しました」しか出てこないのですが、ScaleOutの管理画面には、DoubleClick経由でサイトAに配信したレポートと、たとえばfluctさん経由でサイトAの同じ枠に配信したレポートが別々に出てきます。同じ枠でも事業者の経路によって効果が異なることがあるので、このデータは助かります。

Logicad

リターゲティング案件でCPAを合わせながらボリュームも取りたい場合によく利用します。珍しい機能として、クリックのフリークエンシーがあります。インプレッションでフリークエンシーがかけられるように、クリック数でフリークエンシーをかけることができます。この機能を使うことで、たとえば一度クリックして離脱したユーザーには、その日は出さないといったことが実現できます。

CRITEO

多商品のCPA案件なら素晴らしいパフォーマンスを発揮してもらえるのでテッパンです。通常、CPAを合わせるとボリュームが減ってしまうのですが、CRITEOはボリュームを出しながら目標CPAを達成できるのですごいと思います。注意点は、期間指定で均等配信が出来ないので、たとえば100万円の予算を1ヶ月で設定して、それが2週間で終わってしまうことがありえるということです。目標CPAを達成していればすぐに予算増額できる大手のクライアント様なら問題は無いのですが、予算があまりない中小のクライアント様の場合、次の月まで止めざるを得ないということになります。そして停止期間が2週間を超えると再度タグやフィードのチェックからスタートしなければならないので、その辺りを事前に考慮しないといけません

YahooプレミアムDSP

Yahoo JAPANのデータをかなり細かく使うことができるので、他のDSPなどで保持していないようなオーディエンスに配信したい場合に使用させていただいています。たとえば「韓国旅行にこれから行くユーザー」に配信したいという場合に「Yahoo JAPANから旅行会社の韓国旅行ページに遷移したユーザー」といったセグメントに配信を行ったことがあります。

nex8

人材系や教育系のお客様の案件で、獲得効率高く取れるので重宝しています。実はDSPはリターゲティング配信をすると、DSPの計測とアドエビスのような効果測定ツールの計測がかなりずれるのですが、nex8はこの数字のずれがあまりないんです。これは、他のDSPと配信面のかぶりがあまりないということだと思います。実際にレポートを見ても、あまり他のDSPで見ないようなメディアさんに多く配信されているようでした。この配信面の独自性によって、獲得効率よく数が取れているのだと思います。

Twitter Ads(非DSP)

リターゲティング以外でリーチを伸ばしたい場合に利用しています。そもそも、リタゲ以外のディスプレイ広告(DSP)が、どんなにターゲティング技術が進んでもサーチに比べてCPAを合わせにくいのは、いつ興味を持ったのかがわからないからだと思っています。リタゲの場合、マーク付与からリーセンシーが切れるので情報の鮮度のコントロールができるのですが、その他のディスプレイ広告の場合は、そのセグメントにそのユーザーがいつ属したのかがわかりません。例えば、あるDSPでそのユーザーが旅行に興味があるユーザーと判別された場合、その判断材料は昨日かもしれませんし、1ヶ月前かもしれません。Twitter Adsの場合、「ツイート」などをセグメントに使用できるため、かなりフレッシュな情報を利用できます。その情報の鮮度がTwitter Adsの強さだと思います。

Facebook広告(非DSP)

ターゲティングを細かく切れることがFacebook広告の強みだと思っている方も多いと思いますが、あまりFacebook広告でターゲティングを細かく切ることはありません。むしろターゲティングは「類似ユーザー配信」だけを使用しクリエイティブによるパフォーマンスへの影響がディスプレイ広告以上に大きいので、運用としてはクリエイティブの改善に時間を使っています。その方法で非常に効果よく配信できています。

先ほどnex8のところでおっしゃっていた、計測のズレについて、もう少し解説をお願いできますか?

多くのDSPの場合、DSPのコンバージョン計測とアドエビスのような効果測定ツールのコンバージョン計測が大きくズレます。驚かれるかもしれませんが、効果測定ツールで計測した合計獲得数が、利用したすべてのDSPの獲得数の足し上げの6割にしかならないのは普通なんです。これは複数のDSP事業者のリターゲティングタグを踏んで、最後にコンバージョンした場合、それぞれのDSPは自分たちのコンバージョンと計測する一方で、実際は1コンバージョンしか発生していないため起こる問題です。弊社では、1つ1つのDSPの数字は参考としてしか見ておらず、すべて効果測定ツールの数字でパフォーマンスを確認しています。そしてこのような問題があるため、弊社では前述のように事業者指定のご依頼をお断りしているんです。

結局はYDNとGDNとFacebookだけでいいのではないか?とも思うのですが、いろいろなDSPを使う意味合いというのはどこにあるのでしょうか?

たしかに、一定規模までなら、多くのDSPに手を出すより、まずはGDNとYDNの機能をきちんと把握して、適切に使うだけで、ある程度の効果は出せると思います。しかしながら、より大規模なキャンペーンを行いたい場合は、GDNやYDNにはない機能、もしくはもっとやりたいことが得意なDSPを使いたくなることが多いのです。

クライアントは個別最適の罠に注意

いい代理店はどうやって選べばいいのでしょうか?クライアントさんが気をつけるべきポイントなどありますか?

2良い代理店、悪い代理店というのはあまりないと思います。あるのは、いい担当者なのか、イマイチな担当者なのかだと思うんです。結局はクライアントさんのフロントの方次第だと思います。日本を代表するような大きな代理店さんを利用しても、担当が新卒だったらもちろんノウハウはないだろうし、しかしながら、新卒は新卒の良さがあるかもしれません。誰も聞いたことないような数人の代理店でも、実は大手代理店で力をつけた方が独立した会社で、ものすごい実力かもしれません。結局は人の良し悪しだと思います。
気をつけるべきポイントですが、いろいろなクライアントさんとお話をする中で、フロントの営業が1人いて、各DSPごとに専門の運用担当者がいる体制で運用をしている代理店さんがいらっしゃると、時々お聞きします。専門性があって一見良さそうに見えるのですが、個別最適されていないか心配になります。代理店はいただいた予算の効果を最大化することがミッションであって、各DSPごとの効果を最大化する、個別最適の意味はありません。クライアントさんの視点に立つと、大切なことは、どのDSPでいくら使ったのか?ではなく、そのキャンペーン全体でいくら使い、その効果はどうだったのか?なはずです。しかし、正直申し上げると、たとえばDSPや広告事業者から達成インセンティブがある場合、「会社として今月は◯◯さんの商材をいくら売る」と事前に事業者の取引高目標を決めてしまっているところもあるようです。キャンペーン全体でどの事業者にどのくらいの予算を使うのかは日々変わるはずです。繰り返し申し上げますが、最も大切なポイントは、代理店はいただいた予算の効果を最大化することがミッションであって、各DSPごとに個別最適をする意味はないということです。あるDSPが効果が悪ければ、すぐに残予算を別のところ移す。キャンペーン全体の効果を最大化するためのPDCAを回していくべきです。

良い広告運用者とはどういう人ですか?

「疑問を持てるか持てないか」がすごく大切だと思います。良い悪いではなく、なぜ良かったのか、なぜ悪かったのか、なぜimpが伸びたのか、なぜCTRが上がったのか、どういう仮説が考えられて、どうすればそれを確信に変えられるのか。1つ1つ目の前で起きたことに対して、疑問が持てる人が良い広告運用者だと思います。

大小多くの代理店さんが日本にはいるなかで、ネットフロンティアさんの特徴を教えて下さい

私たちが目指しているのは、お客様のハウスエージェンシーになることです。マージンをもらって広告部分だけを代行する旧来の代理店ではなく、お客様の事業成長にコミットします。そのためには事業戦略ミーティングに出席をすることもあれば、いろいろな商談に同席することもあります。オウンドメディアの設計や記事更新のためのライターの手配、コーポレートサイトの構築やCRMの設計など、事業成長に必要なウェブ領域のことならすべてご相談いただけます。
たとえば、某大手企業様では、2週に1回先方の社長様と弊社の代表がウェブの戦略についてディスカッションをしています。これは広告に限ったことではなく、今後の事業成長に対してウェブがどう活用できるかといった大きな議題について話をしています。私たちはたった数十人の小さな会社です。大手の広告代理店さんのように自社のプロダクトもないし、組織も大きくありません。だからこそ、そんな私たちをお使いいただいているクライアントさんとは、ただの外注ではなく、事業成長のためのパートナーとして、深いおつきあいをさせていただいています

最後に一言お願いします

一緒にクライアントの課題解決に取り組んでくれるメンバーを募集しています。私たちの仕事は、営業というより、やっていることは課題解決のコンサルタントです。ウェブ領域であればお客様のためになることは何でも提案できます。自分の能力を存分に発揮して、クライアントさんと共に事業成長に貢献したいという方がいたら、ぜひお話ししましょう!

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